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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2008年12月の店主日記
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●2008年12月29日(月)

       出の着物  

 早い日の暮れが当たり前の師走で
 神楽坂を昇り、毘沙門天の手前で左に曲がり、すぐのパーキングで
 車を停める 柳腰には少々重い衣装箱を担いで
 すぐ近くの置屋に向かう

 初めて入る置屋では 芸者さんと女将ともう一人の老婆が
 迎えてくれる

 すぐに箱を開け、お正月から着る黒の引き着と帯と襦袢を
 お披露目する
 
 怖くて芸者さんの顔は見ることができない

 老婆が いい柄だね〜と一言
 女将が 本当そうだね〜
 
 芸者さんの顔の 笑顔がみれた

 帰ろうとすると
 お茶でも!と
 4人 一緒のこたつに入れてもらう
 苦手な甘いお菓子と
 美味しい日本茶を頂き

 呉服屋は 悪い癖で
 流暢に色んな話をする
 3人を和ませ(た、つもり)
 老婆(今はペースメーカーが付いた 膝の悪い元芸者さん)に
 最大の敬意を払い
 
 よいお年を!と深々と頭を下げ
 置屋を後にする

 車に軽くなった衣装箱をつめ 店に戻ろうとするが
 ふと 毘沙門天の前で車を停める

 50円玉を握り すたすたと階段を昇り
 手を叩いていいものか 何をしていいかわからないが
 賽銭箱にそっと投げ入れて
 手を合わせて
 願う

 神楽坂は そんな街です!


 いろんな着物を作らせて頂きますが
 ここ半年
 とてもいい経験をさせていただきました

 全国に沢山の呉服屋がありますが
 芸者の引き着を作らせていただく呉服屋は限られます
 その貴重な経験を させて頂けた
 勇気ある芸者さんとこの街に
 感謝です!

 この一年は とても大変だったけれども
 少し
 なんていうか
 
 呉服屋を肯定出来た瞬間でした

 

●2008年12月17日(水)

   七緒の最新号かな?

 一衣舎の木村先生と森田空美さんのツーショットの画像を見た!
『仕立ての時代が来たな〜!』ていうのを直感した。記事はまだ読んでいないけれど
この記事を読んで、読者というか、着物の着手は、ますますある種の覚醒(笑)をするだろうし、呉服屋は仕立て、そしてまず採寸、そして生地の見極めを猛勉強しないと、
高度な着手をお客様として、お相手することは出来なくなるだろうと思う。

 こういうものですよ!という、ある種高圧的な呉服屋の言葉ほど、嘘くさく響く時代に成っていると思う。もう数年前から、仕立てに限らず、生地のこと、産地のことなど、素人呉服屋が言う嘘くさい言葉は、多くの着物愛好家の信頼を失ったかもしれないし、僕もその原因を作った一人だと思います。

 突き詰めれば『糸』からの始まりになるのでしょうが、そこまでは僕の力では到底どうすることも出来ません。が、仕立ての工夫でその生地を生かせることもまた事実です。僕にとって生地のデザインはなによりも優先されることだったのですが、大きなシフトを余儀なくされる時代がくるような気が、ますますします。

 佐世保での『一衣舎・なか志まや二人展』の最中、相変わらずタバコを吸いにサボったり、僕と同じく気まぐれなところがあって、隣で見ていておかしいのですが
(それは、たぶん木村先生も僕のことを、おかしいと思っているとおもいますが)
ときどき、なにか思いついて(このときは、男の襦袢の身頃寸法についてですが)
何かをメモっている姿に、『創作仕立て』とは、こういうところにあるのだと感じました。それは、僕には到底理解できないものですが、ここ数年、一衣舎という仕立て屋と同行できた、世界一幸運な呉服屋である自分が、側にいて、少しでも学んだことを、忘れずにしないといけないと、痛烈に感じています。


追記:よく遊べの記事にある、マンハッタンからのお客様を一衣舎さんにお連れしたときの、ある事件を佐世保で話したら、大いにウケて、まるで噺家になったように
何度もこのことを、佐世保のお客様に話すようになるはめになったのですが・・・
これをネタに、一衣舎さんに、ますます難しい仕立てをお願いしようと、秘かに目論んでいます。頑張らねば!