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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2010年10月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2010年10月27日(水)

西陣お召・スーツ感覚

多くのお召と呼ばれる着物が存在する中で、なか志まやが取り扱うお召が、他のお召と決定的に違う処はやはり色出しなのだと思います。色の名前を上手く当てはめることは出来ないのですが、絶妙な色糸の合わせをしてきます。織物なのでその予測能力には脱帽です。

それと生地のドレープ感が、紋織りの光沢感とよく合っています。
ハイブランドの服地を見ているような感覚になりますが、こちらの生地の方が遥かにクオリティーの高いものであることに、日本人として誇りを持ちます。


●2010年10月10日(日)

英国唐草

極めて私見であるけれど、染めの『更紗』 織りの『唐草』。これが帯における、今のツートップだと考えています。
この帯は英国唐草文をモール糸で織出し、地組織には紬糸を仕様。金糸を織り交ぜ帯の趣味性を高めています。
合わせた着物は紋お召。裏は色が反転して勿論単衣としてお召になるのも、着物の効力を発揮します。

この帯には、紬の着物も合うでしょう。もちろん後染めの着物にも。
昔は、洒落袋帯という呉服的な名称がありましたが(今でも)、今日洋装を含め、ドレスダウン、カジュアル化が進む中で、こうした帯を礼装的にも、カジュアル的にも
どんな素材の着物に合わせるかで、様々なシーンで活躍する帯でないかと思います。

よい帯です。

*この場合の礼装的の中には、式服は、入りません。それと、よいものをドレスダウンさせて装うセンスが、お洒落なような気がします。あくまで私見です。

●2010年10月01日(金)

故A塚田晴可さんが残された美意識というか、ものの見立てや取り合わせの美意識は、昨年暮れよりず〜と自分の中の一つのテーマになっていて、その感覚は着物と帯の取り合わせにも通ずると考えています。

染色家・仁平幸春さんに頼んだ最初の着尺、全面ロウムラはそのテーマに取組むために必要な着物で、今日は第二弾を発注してきました。
前回とは生地を替え、変わった経緯真綿紬(これが実にすばらしい)の白生地にやっていただきます。

色も違いまた印象も変わるでしょうが、このタイプはなか志まやらしい!となるくらい突き詰めていきたいと思います。偶然性なのかそれとも計算し尽くされたロウムラなのか、糸と織りなす紋を浮き沈みさせる染めが、仁平さんの染めです。

当然、帯の見当はあるのですが、出来れば対極の性質を備えるものを出合わせたい。
塚田さんの言葉を借りれば、動と静、古格と斬新、大胆さと繊細さ、、、どちらか一面ではなく相反するものが熟成されて、美が成熟する。
古い時代のものながら古びを感じさせないもの
新しいものでもすっとそこに佇んでいたかと思わせる存在感、
和と洋、現代と古代というように対極の性質を備えるものが出合って
交響しあう空間が生まれます。このイメージをこれまで以上に意識して着物姿に取入れるための着物と帯を集めていきたいです。

画像は、ロウムラ着尺に鉄錆びたような陶器の環。林 健二氏作