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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2007年10月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2007年10月30日(火)

   ちょっとした変化

 昔から緊張感のあるスタイル、それは主に装うスタイルや仕草や、物のデザインだったり、果てはお酒だったり食べ物だったりするのだけれど、それが自分にあったスタイルと信じていました。スポーツをするのが大好きで、早く動ける、高く飛べるとか俊敏さ、スピード感を自分の身体でも表現出来ていて、それは自分の中で一つの美意識にもなっています。そして、緊張感といつも隣り合わせなスポーツは、恰好な自己表現の時間でもあり、鍛錬の為のストイックな精神とか、一つのことに極度に集中できる感覚はとても美しいと思います。こういった価値観は必然的に自分の仕事にも影響していまして、モノトーンな色彩や直線的なラインをもったデザイン、緊張感のあるデザインや素材を好んで着物のモチーフとして選んできましたし、そういった装いを提案してきましたし、それは今でも継続しています。

 さて、昨年からの度重なる腰痛で、自分の身体でそういった緊張感のある動きが出来ない月日を過ごしてきて、いままで気がつかなったものを少し感じ始めて来たような気がします。ただ今の時点では、すべてにおいて大きな転換ではなく、或る種の小さな気付きです。今回の強撚糸ではない先染め織物の着物が持つ、透明感は暖かくもあり、どこか崇高な感じもします。都人に言わせれば土臭い先染めの織りの着物に、
今の僕の身体の感覚に心地よい緊張感をもたらせてくれる感じです。おそらく制作段階から、作家さんの思いの質量がとてつもなく凝縮されていて、一つとして同じ表情のない、それでいてシンプルな布地、もの凄く緻密なもの=緊張感があるのに、出来上がるもの=人に当ててみるとすーととけ込むような感じ。

 抜けているのに隙がないというか、ゆらりとしてるのに、動かない芯があるような
でも瞬間に別な感覚に変化できるような・・・ん〜

 自分の身体の変化と共に、掴みかける何かを最近感じています。

でも、そう言った感覚は、結局はどうそれに自分が関わったかと、緊張のタイプが異なるもので、僕の仕事のスタイルはあくまで、上質なシンプルさを追求し、それぞれに意味の或る緊張感を持ったスタイルを目指したいと思っています。

 

●2007年10月29日(月)

     コーディネイトの提案の一貫性と継続性 

 どんな素材の着尺でも、このように熨斗目取りした絵羽でも、その一枚の着物が
どんな帯を合わせるかによって、時にはカジュアル、時には適度なフォーマル感を出せるというのが15年一貫して提案してきたことで、江戸小紋、様々な無地感の紬をその時代に合うように選んできました。ここ数年は、今の御召しを扱うようになってそれが的確に表現できるようになったと思います。
 このお客様は昨年の福岡二人展で、熨斗目取りした御召しを作って頂いてそのときは少しフォーマル感のある帯を合わせたのですが、今回は少しカジュアルな装いに見えるようにということで、もう一本帯をコーディネイトすることになりました。
 実は、そういうお客様が二人もいらして、昨年納品させて頂いた着物に再会して
また、こうしてコーディネイトを一緒に考えさせてもらえる機会を頂いてます!

 呉服屋冥利に尽きます! 感謝!

 福岡は確かに東京から離れていますが、東京でのお客様に対するのと同じように
仕事をさせて頂けるのは本当に嬉しいものです。今回は来福するのに一年かかりましたが、来年2008年の6月6〜8日は、浴衣を持って福岡に行くことを決定してます!そして、10月23〜26日には三人展です。これも決定!

 自分の信ずる処に一貫性を持ち、それを継続する力。名古屋、福岡とこれからも
毎シーズン自分の信ずる処を提案できるようにしていきたいと思います。本来、経営的に考えたら、東京でじっくりと仕事をするのが正しいと思うのですが、僕はこうして外に出て行くのが好きです。好きだから継続出来るのだと思います。
 昔、『ワーズワーズの庭で』という番組で『かつぎの呉服屋』として出演したことがありますが、よく捉えれば一貫性があり、否定的に捉えれば儲からない呉服屋とも言えます(大爆)でも、好きでこうしているのですからまぁ、いいのでしょう(笑)

●2007年10月28日(日)

     クリムトの白い女性

 以下、吉田美保子さんからのお言葉・・・

糸は絵羽と同じ、緯糸は17種(白い糸6種/薄いブルー3種/絣染めになった藍染め・濃淡の墨染め・絣染めになったログウッドで8種)。
絵羽は横段のグラデーションに注目してもらいたかったので太目の糸を多くしたが、着尺は、無地感覚でということだったので、太目の糸を少なくし、細い糸を多めに使っている。それが功を奏して、経緯のバランスや布としての風合いは、絵羽よりもむしろ納得がいく仕上がりとなった。
ランダムな横線の入り方が面白い効果を産んでいるので、是非それを楽しんでいただきたい。
「白」のイメージは、海辺でとったばかりの牡蠣を浜辺であけた時に目に入る身の色。そして、クリムトの絵の女性が纏っているドレスの白。クリムトにインスピーレーションを受けたけれども完全に和で、同じ匂いでありながら独自の世界。絵羽の「大理石の宮殿」のイメージよりも有機的で、女性を綺麗に見せる「白」に織り上がった。

 追伸:『大理石宮殿』と題された絵羽着尺は、御陰様を持ちまして素敵な着手を
得ることができました。なか志まや、吉田も大変うれしく思っております。これから胴裏、八掛の染め、帯合わせ、小物合わせ、そして最高の仕立(勿論、一衣舎)と本当の意味での完成に向かってカウントダウンです。

 強撚糸から離れ、やわらかな光沢と心地よい緊張感を表現できた着物、
なか志まやの新しい展開の記念すべき第一作です。

●2007年10月17日(水)

    吉田美保子 新作着尺完成!

 福岡での『一衣舎 島内 なか志まや三人展』へ、商品を発送するのに朝から忙殺され、尚かつ今日は最近売り出しの若手女優『北乃きい』さんの振袖撮影が夕方から
六本木スタジオであり、神経も腰も休まらない・・・朝から頭痛と腰痛で気分も悪い!とりあえず、急いで12箱の荷を発送できるようにして、撮影に向かおうとする時に、吉田さんが来店。新作の『大理石宮殿・着尺』を持って来てくれた!
そして、サラサラと捲きから落ちるその『布』に目が点になった!

 『どこまでも温もりを持つくせに、やたらと透明感のある布』

いままで、透明感のあるもの!とか光沢感のあるもの!鉱物的、無機質的!な
感覚の着物を強撚糸の糸に求めて来たけれど、ここにそれと真逆な存在でありながら、それ以上に何とも言えない透明感、清々しさを表した布が目の前にある。

 おそらく、次の仕事のことと、体調の悪さでお決まりな誉め文句しか、吉田さんには伝えられなかったと思う。バタバタと荷を作り、福岡に発送して、お店を後にしてしまった。いま、吉田さんからの説明を読み返しながらあらためて、凄い着尺が完成したのだと確信している。福岡で荷を解くのが楽しみである。

以下、吉田美保子さんからのお言葉・・・

糸は絵羽と同じ、緯糸は17種(白い糸6種/薄いブルー3種/絣染めになった藍染め・濃淡の墨染め・絣染めになったログウッドで8種)。
絵羽は横段のグラデーションに注目してもらいたかったので太目の糸を多くしたが、着尺は、無地感覚でということだったので、太目の糸を少なくし、細い糸を多めに使っている。それが功を奏して、経緯のバランスや布としての風合いは、絵羽よりもむしろ納得がいく仕上がりとなった。
ランダムな横線の入り方が面白い効果を産んでいるので、是非それを楽しんでいただきたい。
「白」のイメージは、海辺でとったばかりの牡蠣を浜辺であけた時に目に入る身の色。そして、クリムトの絵の女性が纏っているドレスの白。クリムトにインスピーレーションを受けたけれども完全に和で、同じ匂いでありながら独自の世界。絵羽の「大理石の宮殿」のイメージよりも有機的で、女性を綺麗に見せる「白」に織り上がった。


 画像は福岡で撮れたら、載せてみます。


ふ〜疲れた〜

●2007年10月09日(火)

        『一衣舎 島内 なか志まや 三人展』

   福岡 天神 警固神社にて 10月20日(土)〜22日(月)

 二年続けて来福できます!この『来福』という言葉の響きが出張する身にとっては
結構嬉しいものです。街の直ぐ上を飛ぶ飛行機は香港のようで、那珂川を見渡せば大阪を思い出し、海側は神戸のようで、美味しいご飯は今日は何を食べようかと労働の意欲も湧きます。

 気っ風市も終わったので、年内の東京での展示会は最後となり、あとは福岡そして
11月には佐世保に参ります。昨年の福岡で少し手応えを感じたなか志まやが提案する着物スタイルは、今年はどんな風に受け止めてもらえるでしょう。一貫して言い続けてる事は変らず、僕のコーディネイトの信条も昨年と変らず、今年も福岡の方に
見て頂きたいのですが、昨年とは違い・・・

 オリジナルな着物や帯を、今回はお見せ出来ます。
なか志まやだけのオンリーワン!(ん!?いせたん・・・)

 福岡展では、東京 気っ風市で発表された吉田美保子作『大理石宮殿/9月店主日記参照』の着尺バージョンを、持って行きます!

 いま、吉田さんが頑張って、あの糸達を使い織ってくれてます。
絵羽の素晴らしさは、十分に堪能させていただいているのですが、仮絵羽を羽織った瞬間に、『まだ一反分糸あるよね!ここの部分だけの柄で着尺織って!』
とすぐにオーダーを出していたのです。
(実はこれがとんでもなく 絵羽以上に難しいオーダーになったのですが、これは
後日の日記にでも書けたらと思います。)
 
 昨年の福岡では、御召しを中心に都市的なコーディネイトを提案させて頂いたのですが、今年は御召し糸とは違う『糸』(=意図)で、都市的な空間に映える着物も 提案できればと思っております。吉田さんの着物はその意味で、なか志まやの中で先駆けとなり、今後の新たな方向をしめしてくれるのではと期待しています。

 福岡の方に是非、この着物達を見て頂き                        
 ご意見をお聞かせ願えればと切に願います。
 『来福!』

 

●2007年10月08日(月)

    昨年の福岡展総括のおさらい・・・

褻着(けぎ)の中の晴着

 10月に福岡にて、一衣舎さんと二人展を行い木村幸夫先生とも大旨、一致した
見解は、なか志まやは、『褻着(けぎ)の中の晴着』ですね。。。。
ということでした。
 『褻着』という言葉、最近では滅多に聞くことはありませんが、着物の歴史上においては明らかに存在した言葉です。
『褻』という字は、今日では『セツ』という音読みで見あたり、『慣れる』とか
『汚れる』という字義で、褻言(色ばなし)、猥褻(わいせつ〜笑)の熟語が示すように、褻着(けぎ)とは『くつろぎ着』であって、しかも『夜着』なのです。
(木綿が普及する前、布団のかわりに着物が布団になった時代もありました)

 一枚の布が衣服と布団に使い分けられて来たことに、『褻着』としての意味合いがよく汲み取れ、きもの特有の『色』とか『匂い』が妖しく生まれてくる所以のように
思います。

 『褻着』は洗えなければならない!
まさに、一衣舎さんの着物の根底にあるものです。現代では着物を布団にすることなど到底考えらえませんが(笑)、日常に密接に関わる着物=褻着は、現代においては
自分でも、手入れが出来るもの、寛げる素材(見た目にも肌触りにも)であるべきなのです。
 『晴着』は権威的である!
というのが、大筋では正解のようですが、服飾の歴史はどんどん『晴れ』の必要性をなくしていきました。ここでもよくいう『着物のもカジュアル化』しているとおもえます。僕が思う所謂訪問着には、絵柄は必要としないし、振袖、留袖、喪服以外の全ての着物を振り分ける言葉は、僕にはもうさほど意味など感じなくなっています。
 しいていえば、これは『昔で言う訪問着的でね、、、とか色無地的でね、、、』
とかです。 じゃ、僕が思う処の『褻着のなかの晴れ着』てなんだろう。

 田舎者の僕が、東京で生活するようになったとき、街にでると
それは全て『晴れ舞台』のように感じました。その感覚は今でも変わりません。
華やかな街並、シックなインテリア、超高層の建築物、情報にあふれ物に溢れ
世界でも一流のものを身近に感じられる『東京』は幾つになっても僕には
『晴れの舞台』のようです。でもそれも『日常』であることを考えると、どうしても
僕は着物を褻の中の晴れ着と考えてしまいます。

 『都会的なきもの』 『スーツ感覚』 すべて晴着のことをさした着物です。
そこには、権威的ではない、この都市の日常に映える、シャープでラグジュアリー
な着物なのだと思います。

 福岡という都市でも、なか志まやの着物を提案させて頂く機会を得て、また少し
手応えを感じました。僕が思う『褻の中の晴』は東京だけに限らず、理解して頂けたことを嬉しく思います。素材とコーディネイトで見せる着物の世界ですが、そこには
『くつろぎ』もあり『緊張』もあり、そして『色気』もある衣裳です。
来年は、色気のある着物を提案できればと考えています。
 それも、晴れ的な色気?なのでしょう。そんな素材がうまくみつかればいいのですが、色気のある着物を探して行きたいとおもいますね(笑)


 ふむふむ・・・色気のある着物かぁ〜品がなきゃ嫌だしね〜
もともと色気のある着物は存在していなくて、色気のある人ということに
まとまるんだろなぁ〜笑