●2015年08月26日(水)
染織の遺伝子 日本の工芸の中で染織に興味を持たれたなら、柳という名前を何処かで必ず目にされたはずです。柳 宗悦(むねよし) 柳 悦博(よしひろ) そして柳 崇(そう)さん。さらに柳さんの工房で学ばれた数々の染織家の方々。 プロの呉服屋でありながら、その系譜、詳しい事を総て分かっている訳ではありませんが、日本の染織の中で大きな柱となっているのは間違いありません。 画像の帯は、柳 崇さんのご子息、柳 晋哉さんのもの。 崇さんから、『矢車地菱綾織九寸、柳の伝統の組織だよ』と教わりこの帯を受け取りました。撚糸と精錬にこだわりのある柳さん作品らしく、糸にふくらみを感じます。触ると『ククッ』と手に馴染みます。 晋哉さんには、私は工房で機に向かってらっしゃる姿を後から眺めているだけで、帰り際に簡単な挨拶しか出来ませんでしたが、いつか気軽な話も含めて、色々お話をさせて頂きたいと考えています。彼が機(はた)に向かうその姿には、確かに伝承されていく遺伝子のようなものを感じましたし、これから私はあと何年、この呉服という仕事に携われるか分かりませんが、これからも追い求めて行きたい染織作家さんだと思ったからです。 この帯はシンプルな構図でありながら、見る角度で大きな菱文が浮き沈みするので非常に立体感を感じる組織で織られています。 天然染料で染まった色合いもシックな銀鼠、大人の女性が締めているイメージで、これまたシックな綾織の着尺を合わせてみました。同系色の小物で纏める事も出来ますが、ここは帯締か帯揚どちらかにビビットな色合いを挿してみたいと思う私は、まだそんなに老いていないかな、、、と、この投稿のテキストを書きながら、加賀の棒茶を啜っています。
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