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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2008年05月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2008年05月29日(木)

       図案

 なか志まやが関わった図案は、デザイナーの岡さん、ゴトウさん、芝崎さん、そして染屋を通して名も知らない方など、多くあります。着物、帯、襦袢、羽裏そして浴衣などなど。
手元にある図案帳を眺めると、その時の自分が少しながらも反映されているのは、まるで昔の自分の日記を読んでいるようです。
 浴衣の季節となり、3年目を迎えるこの図案を眺めていて、あっ!この線がこの図案の生命線だなと初めて気づいたりする自分が情けない。
 大きな括りを考えて、到達点を決めてそこから詳細な部分を決めて行く作業が、だいたいの仕事の進行のように思うのですが、1年目、2年目そして3年目となると、図案が、ある種成長というか、変化したと感じるのは親馬鹿といえるかもしれません。
 歴史を刻んで行くことが、図案を成熟させていくことだと、早朝にぼんやり考えています。やはり、大好きな図案ですね、これは。

●2008年05月22日(木)

     『ドラコニア・サロン』 澁澤つれづれ7


 完成した図案。線画の一部・・・これに彩色 手法はデジタルです。

●2008年05月19日(月)

『縛り』から一年、ドラコニア・サロンへ The 澁澤つれづれ6

 新しい図案を描いてもらいたいと、Rumixの芝崎さんに打診したのは、確か昨年の夏の頃だったか。なにかの折には澁澤龍彦のことを考え、その周辺の人々の関わりを知り
北鎌倉の澁澤邸、あの書斎とサロンに集まった著名な人々が、澁澤龍彦とどんな談笑をしたのかと色々想像してみる。
 様々な資料本と的確な助言のおかげで、図案のレイアウトも彩色も、そして正式な呼び名も今日のこの日に決定した。

 新しい図案の名は、『ドラコニア・サロン』
ピン!と来る方は、僕よりも澁澤さんのことをご存知の方でしょう。
そして、この図案の核となるのは、『本』という物体であります。固く閉じられた無数の紙の間に、全世界、全宇宙がひっそりと収められている、澁澤が偏愛した本、そういう書物がこの図案の核となるものです。
 そして、その他のモチーフは、その書物に収められた澁澤さんの好みを具現化した様々な物体であります。異端であり暗黒さを感じさせながらも、冷徹であり硬質でさらりとした線の美しさが際立つ図案となっています。
 彩色は、デジタルで行い、幻想的なサロンのイメージをより抽出したものにしました。

 浴衣では、極小ロットでの制作となります。そして今後、この図案は様々な和装のアイテムに登場することになると思います。

   この一年の記念の図案となりました。




●2008年05月15日(木)

   『The 澁澤』 つれづれ5

 図案の打合せの第一段階は、僕の方から投げかけた様々な澁澤的と思われるエッセンスを、デザイナーの芝崎るみさんがコラージュして見せてくれた。この時には特に気にとめなかったのだけれど、コラージュという技法を意識的に選んだのか、それともそれしか僕の投げ掛けに応える方法がなかったのか、たんなる偶然か、今にして考えている。(大量の横尾忠則のコラージュ作品を見たせいだな、きっと)

 この『つれづれ』を書いている時点では、既に図案の線はもう完璧に描かれている。
ここで見られるコラージュからさらに変化して、天地のつながりがあって、衣装デザインとして整合性があり、身に纏って奇異であるけれど、その細密さが身体に妙に絡み付く感じがして見飽きない。手元にある図案を眺めて、つくづく美しいなと思う。
 
 コラージュのレイアウトを眺めている時には、このようにすでに、既成の色で構成されていて、本は本の色であるし、球体関節人形は人形の色であるし、水晶玉は玉の色である。当たり前であるけれど、デザインポスターではないので、衣装として成立させる為に色を決めなくてはいけない。いま、それを考えている。

 横尾さんの線画が素晴らしく美しかった。
 横尾さんの生絵、アクリル絵具のグリーンが良かった 嫌いな色のはずなのに
 ベルメールのエッチングも見れた。
 澁澤さんの本は相変わらず読んでない

 ここ数週間を反芻して、今日明日中には、色を決めないとな
 お酒飲み過ぎかな〜

●2008年05月05日(月)

    澁澤龍彦と四谷シモン   『The 澁澤』 つれづれ4

 この二人のを関係を知るにあたり、少し共感出来ることがあった。自らを小学4年生の頭脳、読書というものをしたことがないという四谷シモンと、東大の仏文科卒のエリートで、彼の名を世に広めたサド作品をはじめ、多くの文芸批評、美術批評を書いた澁澤が、四谷シモンと交流を深めた。それが澁澤作品の読書を通してではなくあくまで人間的なつながりのなかで、四谷シモンは、澁澤が望んでいるであろう人形を作ろうとしたであろうし、澁澤はそんな彼の作品を愛したということである。
 人の人生を左右するような出会いはあると思うし、それが澁澤が書いた『幻想の画廊から』で紹介した、ドイツの美術家ハンス・ベルメールについて述べた文章の中の一つの言葉というのも実に興味深い。
『痙攣』という言葉だ。四谷シモンがどうこの言葉に感銘をうけたのか、僕には想像もつかないけれど、ベルメールの球体関節人形の一枚の衝撃的な写真と、難解な澁澤の文章のなかでただ一文字『痙攣』という言葉を読み取り、自分の人生を懸けた彼の行動は、僕には実に愛すべきことであるし、こういう類いの出会いは、自分の身にも十分に起こりうる出会いだと思えた。そして澁澤龍彦という人間に出会えた四谷シモンは、とても幸せな人間なのだと。『球体関節人形』はこの『The 澁澤』のデザインにおいて大きく、重要なデザインである。