●2010年10月20日(水)
画像は、紫地に梅・竹 総刺繍・訪問着。。。 27歳になって、ようやく呉服の修行でもしてみようかと決意した時、何処で修行してよいものか全く分かりませんでした。とりあえず、銀座、日本橋へと脚を運び、ただただ、ウインドウを眺めて歩き回って疲れ果ててしましたね。その当時の情報誌は、やはり『美しいキモノ』で、実家でも見かけてはいたのですが、修行先も決まらないまま1ヶ月くらい放浪してました。 結局、縁あって白瀧呉服店さんで修行させて頂くことになるのですが、その前に一軒だけ勇気を振り絞って、雇ってもらえませんか?と銀座の老舗に飛び入りで行った店があります。 京屋林蔵という小さなお店でした。バブル前、きしやなど銀座には大店があって、着物も礼装が主力の時代でした。一竹辻が花も脚光を浴びていて、西武が有楽町マリオンに出店したときも特選サロンが設けられて、その前を眺めては、こんなものを平気で買う人々がいるんだ、なんという格差!と溜息を付いたものです。 京屋林蔵さんの辻が花は、一竹さんのと比較して、確かにインパクトは少ないけれど、とても品を感じられ、こちらが本物ではないか!と素人のくせに勝手に思い込み、店を訪ねました。小さな店に数点の着物だけがあり、やはり敷居が高い、、、案の定、速攻で断られましたが、そこに掛かっていた総刺繍の振袖が今でも眼に焼き付いています。 それから22年、今の着物のなんと、さっぱり!としたこと。 それは、自分の志向するものも、確かにシンプルで尚かつ上質なものをセレクトするように変化して行きましたが、いまだに振袖、そして勝負訪問着を選ぶ時には、全体総附柄を探す事が多いです。それは京屋林蔵でみた、総柄の刺繍や絞り柄が、自分の呉服業の始まりとして、心の奥底に刻まれているからなのかもしれません。 この総刺繍の着物を見ながら、そんなことを思い出します。
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