●2009年07月05日(日)
図柄は体型の補整を目的とする・・・ 今年も染めた浴衣『縛り』。 お買い求め頂いたお客様に力説したのは、SMとしての麻縄のことでもなく、男女間の心情的なことでもなく、いくつかの線で、帯から下を逆三角形にみせる効果があるということでした。 着物姿の美しさの一つに、腰から裾にかけてこのようなラインを出す事が、一つ重要で、これは着付けの仕方と寸法と身体のさばき、そして最後は柄による補正で生まれてくるものです。ようは錯覚なのですが、柄の入り方で、なで肩にみせたり細くみせたり、背を高くみせたり、そしてその逆の効果も生まれます。 反物でみた時、あれほどワクワクとしたのに、仕立てあがって、いざ羽織ってみると何か違和感を感じられる方は、いい感覚をお持ちだと思います。吊るしものを売ったり買ったりするなら、別に問題はないでしょうが・・・着付けを終えて鏡で自分の姿を見た時に、いい着物は本当にその人を輝かせてみせるものです。それを感じさせない原因の一つが、身体に沿わない柄によるものです。 そういえば、昔の日記に、今の留袖は金、銀の帯をつけて化粧回しを下げたお相撲さんのようだと、随分ひどい事を書いたとおもいますが(また書いてますが)、絵柄の着物が売れなくなって来た時代、その実情はさほど変わらないというか、確認できません。ほとんどレンタルをお召になられてますしね。留袖という限られた空間にしか絵柄を描くことができなくても、色柄の配置によって、帯から下を裾すぼまりに見せることができるのです。四角い絵をぶら下げているようにはならないのです。 浴衣でも訪問着でも留袖でも、振袖でも、この決められた空間の中に、柄がデザインされるという着物は、洋服と違いかなり制約を受けているようですが、その実、とても自由で、この狭い空間の中で如何に色柄を展開させ、着手を美しく見せるかということに、あれこれ思案を巡らせることは、極めて日本人の特質に合い、その感性を発揮できる衣装なのだと思います。 洋服大好き、ジャージも特に。ついに、ジャージ素材のスーツを手に入れました・・・でも洋服は仕事にはできません。僕にはあまりに多くのものがありすぎて 表現方法も無尽蔵のように感じるからです。あと、やはり、最終的には包む・隠す・縛る(結ぶか:::)!という何百年と変わらないその行為が、日本人としての自分の感性に合っているのだと思えます。 決まり事はある!伝統的な美しさも受け継がれている! それがあるから、ちょっと傾いてみたくなる。それが一番の面白さであります。
|