縫紋をつける着物は様々あり、染めの着物、織りの着物に、家紋ではない飾り紋を付けたりと、黒留袖、色留袖、喪服などの決まり事がある着物以外では、その楽しみ方や用途は沢山あります。そうした場合、まず考えるのが、男性主体の社会制度で作られた家紋が、今の女性の着物にデザイン的に合うかどうか、単純に可愛いか、はたまた美しいかと思えるか等を検討します。
これはお客様に良く聞いて、そのままの家紋、多くは丸ありで良いか、丸なしにしてみるか、実家の紋にするか、変形させるか、などなどご提案しています。そもそも、丸があるとどうも男っぽい。まして厳ついデザインだったりすると、尚更少し変更してみたくなるのも肯けます。一つの例として、、、
画像は、『織り無地の着物を準礼装』としてお召しになるので、縫い紋を!というご要望に対する提案です。まず、本来は『丸ありの違い鷹の羽』を、丸なしにして、鷹の羽を女性らしく蝶に見立てた『鷹の羽蝶』にデザインを変更しています。そして、三色の色糸を選び、グラデーションで刺繍します。
今回は背にある一つ紋だけではなく、両袖裏にも家紋を刺繍して三つ紋にし、更にドレスアップ狙います。画像のように背紋の鷹の羽蝶から、『一つ折れ鷹の羽丸』に。こちらは、2色の色糸で左右が対になるよう縫い分します。
こうして仕上がった着物が下の画像。『織りの着物で礼節を出す』というお客様のご要望にお応えした着物になりました。
着物は志賀松和子 作品『青・市松』、帯は勝山健史作品です。