少し暗めの照明の中で、青と墨色の揺らめきに、吸い込まれる様に近づいて行ってしまったのがこの帯です。
墨色は銀箔でした。引き込まれたには訳があり、この配色は頭の片隅に映像の記憶がありました。それはMOA美術館が所蔵している、杉本博司氏の『月下紅白紅梅図』です。光琳の作品のように金地ではなく、青味のある墨色が杉山博司さんの屏風ですが、暗闇の中、僅かな月明かりに流水が浮かぶ様子は、国宝本家より、こちらの色目が好みなのです。
古箔をはじめ、幽玄な雰囲気を得意とする誉田屋源兵衛らしい織物、まるで陰翳の秘密を理解し、光りと蔭との使い分けを巧み操っているような、そんな存在感のある袋帯です。皆さんならば、どんな着物に合わされるでしょうか。とても楽しみな袋帯ですね。
着物:織司なかむら 毛万筋縞
袋帯:譽田屋源兵衛 冨貴花