どの村にも寺や民家にも、文化財レベルではないけれど、伝世品と呼ばれる仏像や巻物、あるものは漆器だったり、陶器だったり、ある家ではお人形だったりがあったりして、それを天気が続く春と秋に蔵や棚などから出してきて、長老や家主が次の代の子供達に手伝いをさせながら、『虫干し』をし、その品物を説明して修繕箇所などを見て、手を施し受け継がせていった、そういう習慣の事を曝涼と言うそうです。木や布を主たる材料とする作品が多い日本において、昔からこの手法は文化財レベルに限らず民間レベルまで、隅々まで行われていた知恵です。
『目通し、風通し』
文化財とは言えないけれど、着物を愛して下さる方のお家には、その方にとって大切な着物が箪笥等に畳んで仕舞ってあります。道具的な意味合いの着物や帯や、ほとんど袖を通すことがないけれど、ただ好きで誂えたもの、もしかしたらそうでないもの、染織的価値から購入したもの、はたまた誰かから譲り受けたもの、などなどそのお家にある理由は様々ですが、着物という衣装は、先進国日本において、他国の民族衣装とは違うレベルで今も愛されていると思います。
伝えたいものや残したいもの、自分だけでおしまいにするもの、きっと様々だと思いますが、『目を通し、手を差し入れ、布を感じて、あるものは広げ、あるものは風を通す』これは着物や帯がして欲しい事。どの季節やどの時間帯にするなど、さまざま意見があると思いますが、まずは天気の良い日、ご自身の体調や気分の良い日、時間に余裕のある時にやってみると、着物や帯の状態を知る事以上の何かを感じて貰えるかもしれません。呉服屋の戯言ですがそんな気がします。