勝山健史 『一陽来復』2022年
『一陽来復』と名付けられた勝山健史さんの帯。それは今年に希望を感じさせてくれるタイトルです。
『冬が終わり春が来る事。または良くない事が続いた後に、いい事が巡ってくる事』
『易の用語で、陰気の極まる陰暦十月のあとに、陽気の生じる陰暦十一月•冬至が来る意から』
柄のオマージュは、教王護国寺所蔵の裂。勝山健史さんが、冬至のカボチャとコロナ明けろ!の願いをウリに掛けて名付けられました。
『あけぼの』と言う蚕品種の生引き•生糸を経(た)て糸に、塩蔵•灰汁練を緯(よこ)糸に、織りなす布は、いつか誰かを暖めうるかもしれない(あれっ
話は変わり、帯は、現代の和装において、装飾性に重きを置かれていますが、時代を遡るとかなり呪術性の高いものである事が分かります。科学技術が今のようになる前、大和の国の人々の願いの多くは、布を振る事や紐状のものを結ぶ事で、それを成就させようとした和装の歴史があります(詳しくはお会い出来た方に)。この帯を締める、否、結ぶ事が(結んでくれる事が)、多くの福(復)を呼び寄せてくれると、呉服屋としては信じております。
合わせた着物は、志賀松和子さんの平織変形市松。こちらも国産繭(八丈織の菊池洋守さんが遺された)。経(た)ては七分練•緯(よこ)は八分練と言う絶妙なセッティング。生絹(きぎぬ)を好む傾向がある私に、精錬の重要性を教えてくれる作品です。
精錬=清廉、そんな言葉は少しも僕の人生には当てはまりませんので、濁りがない復が続きますようにと、この取り合わせにも願いを込めました。
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