商品紹介

有水羽絹(うすはぎぬ) 勝山健史 勝山織物絹織物研究所製

『有水羽絹・うすはぎぬ』が入荷しました。
勝山織物絹織製作研究所で作られる、勝山健史さんの絹織物の最高峰です。健史さんの綺芙織(きふおり)という着尺をご存知方も多いと思いますが、この有水羽絹は、大袈裟に言うと何もかも違います。かつて『至高の単衣』という投稿(2020年5月1日)で志賀松和子さんの織物を取りあげましたが、この反物がようやく織り上がりましたので、こちらも『至高の織布』としてご紹介せねばなりません。『美味しんぼ』の海原雄山や山岡士郎のような地位も名誉もない、あえて言うならば『孤独のグルメ』の井之頭五郎のような立場の自分ですが。
勝山健史さんの着尺には様々なバリエーションがあり、一概にこんな感じの織物とは言いづらい所があります。綺芙織のように京都の周山で織られるもの、有水羽絹のように長野の絹織製作所で作られるもの、蚕の品種、繰糸の方法、繭保存の方法などによっても、また織組織、経緯糸の組み合わせ、糸密度、機(はた)の構造、仕上げによっても、かなり違いが出て来ます。
今回は、まず大きくは蚕品種が『あけぼの』ではなく、『青熟』である事、そして保存の期間がかなり違うことがあります。また『至高の単衣』と同じく経緯(たてよこ)共に生糸(なまいと)である事、いわゆる生絹(すずし)の綾地である事(生絹という文字を見ると、夏物?と思われる方もいらっしゃると思いますが、薄ものの生絹とは違います)、そして何よりこの軽さ(440g)としなやかさ、そこに何とも言えない、品のある艶、光を持った織物に仕上がりました。
色目は、悩んだのですが『白茶』、染料は胡桃です。グレー系は前に作った事があるのですが、今回のこの色は、春でも秋でも、そして冬でも使える『ニュートラルなベージュ系』です。難しい注文かもしれませんが、この辺りの色出しの上手さは流石だと言えますね。
こういう無地の織り布に、合わせる帯はきっと無限大、お客様の手元にあるあの帯、この帯が皆さんも浮かぶと思います。ある程度、染織を見慣れて来ますと、着物と帯の取り合わせは、載せて見るとすぐに分かり、格の合わせや季節感などはベースにあるとして、この着物が呼んでいると感じる帯が良い取り合わせになりそうです。
勝山健史さんの帯をお持ちならば、全て合うでしょう(笑)。織無地を準礼装としてお召しになるならば、格のある帯も行けますね。ここは、時代物の帯なんかあれば載せてみたい衝動にも駆られます。そして、本結城紬に見られる布の経年変化とは違う、布の経年変化が数年、10年、20年と味わえるのも有水羽絹の醍醐味です。
また完璧なトレーサビリティを持った絹織物である事、これも大きな特徴の一つ。
長野の勝山織物絹織製作研究所では、文化財の修理用絹布を製作しています。同研究所の志村氏が国の選定保存技術者として認定されている事からも分かるように、ここで製作される絹織物は、やはり何もかも違うのです。
久々の有水羽絹、注文をしてから出来上がるまで数年になりますが、見事な作品を作ってくれた勝山健史さんに感謝致します。その間色々とご尽力頂いた、洛風林の堀江麗子さんにも御礼を申し上げます。
こういう類いの織布は、どなたにでも、それ程のものかと、好きになって頂ける作品では無いかもしれません。ただの無地じゃ~ん!と言えば確かにそうですし。しかし、いつまでも眺めている事が出来る、角度を変える度に布の表情が変化して、光のドレープが織り布に出たり消えたりする、無地なのに豊かなニュアンス、品格を重ねもつその佇まいに、共感して頂ける方がいらっしゃるのではないかと考えております。
『至高の織物』、私が言うと言葉が軽くなるのであまり言わない様にしますが、ご覧頂ける機会のあるお客様には、連呼してしまうかもしれませんので、先にお断りをしておきます。

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